はじめてのオーダースーツとあれば、生地の良し悪しなんてほとんどわからない方が多いことでしょう。そんな方々の参考情報として、初回で選ぶべき生地の考え方や、注意点などについて、これまで10着以上のオーダースーツを仕立ててきた経験も交えながらお伝えしていきます。
背伸びはしすぎない
まず原則として、「初回はなるべく安くおさえる」を原則にすることをオススメします。
もちろん、「ここぞ」というシーンのためにオーダーをするのであれば、ある程度良い生地で作るのも良いでしょう。お店選びさえ間違えなければ、スタッフさんにお任せする形で良いスーツが仕上がるかと思います。
しかしはじめての場合、細かい自分の好みや、自分にとって本当に必要なオプションなど、オーダースーツの醍醐味といえる部分についてはよくわからない方が大半のはず。2回、3回とオーダーしていくことで、オーダースーツの世界がわかってきて、本当に満足のいくスーツが仕立てられる面もあります。あるいは「こうしておけばよかった」とはじめてのオーダーを後悔するケースも少なくありません。初回で100点満点のスーツが仕上がったとしても、ある程度知識がついて経験を経てからオーダーしたスーツの方が、120点、150点とより満足のいくものになりやすいということです。
だからこそ、直近で「ここぞ」というシーンがある方以外は、まずはなるべく低価格でおさえておく方が無難といえるわけです。一度オーダーしてみることではじめて見えてくる世界があるので、急ぎでない限りは、高級なオーダーはその後でもよいのではないでしょうか。
昨今のオーダースーツ市場は価格競争がはたらき、「2着セットで5.2万円」というのがだいたいの横並び価格になっています。グローバルスタイル、ユニバーサルランゲージ、DIFFERENCE、カシヤマなどが代表例でしょうか。これらの大手店でまずは最低価格で仕立ててみるのもよいでしょうし、あるいは初回に限って1着単体で2万円で購入できるSADAも、お近くに店舗があれば有力な選択肢になるかと思います。

ポリエステル混生地の場合の注意点
上記のような「低価格」を原則とするなら、選べる生地はウール(=天然素材)100%とはいかず、ポリエステル(=化学繊維)を50%前後含むものが基本となります。ウール100%でオーダーができるのは、安いお店でもだいたい5~6万円くらいからです。
ポリエステル混生地といっても、品質にはけっこうばらつきがあります。ここで注意すべきは、「ポリエステルの配合率」と「見た目」です。
前者はわかりやすい指標かと思います。ウール30%・ポリエステル70%の生地よりは、ウール70%・ポリエステル30%の生地の方が基本的には上質だとされます。市場に出回っているものは、ウール50%・ポリエステル50%の生地が多いでしょうか。
低価格店の場合、「1着2万円台から!」などと高らかに宣伝しておきながら、その価格でオーダーできる生地はウール30%・ポリエステル70%というもので、しかも2種類くらいしか置いていないお店がけっこうあります(むしろその方が多い…)。
一概に「ポリエステルの割合が大きい=低品質な生地」という話ではないのですが、一つの基準としておさえておくべきではあるでしょう。
もう一つ、「見た目」については、事前知識を持っていないと少し判別が難しいかもしれません。要は「天然素材っぽいか」「化学繊維っぽいか」という話なのですが、これはウールとポリエステルの配合率だけで決まるものではありません。
たとえば、こちらのカシヤマの最安生地。ウール30%・ポリエステル70%の配合率なのですが、化学繊維特有のテカリ感があり、またざらっとしたポリエステルの風合いがやや目立ち気味です。


一方同じポリエステルの割合の生地でも、ファブリックトウキョウの場合、より柔らかく、ウールっぽい雰囲気があります(↓)。


あるいは、ウールの割合が高くなると、それに比例して天然素材感が強まる場合も。一着まるごとのサイズで生地が置いてあるSADAでは、ウールの割合が30%の生地、50%の生地、70%の生地と色々ある中、たまにウールが高配合の生地も掘り出し物的に置いてあります(↓)。


これを2万円でオーダーできたのはラッキーでした。別で置いてあったウール50%の配合率の生地も、しっかりウール見えする上質なものでした(↓)。

ということでここまでをまとめると、低価格の生地の場合、ウールの配合率と見栄えの両方に注意を払って生地を選びましょうという話です。前者(ウールの配合率)が良くても、実際の見栄えが良くないケースも少なくありませんから、両方を重視した上で「これならいいか」と思えるものをぜひ選んでみてください。
最初から高級生地でオーダーする場合の注意点
とはいえ「ここぞ」というシーンが目の前にあったり、あるいは「せっかくオーダーするのだから良い生地でつくりたい」という方もいらっしゃるでしょう。
その場合、ぜひコスパに注意をはらって生地は選ぶべきです。
たとえば、ゼニアやロロピアーナなどのトップブランドの生地に目が向きがちですが、これらは生地は上質であることに加え、“ブランド代”的な形で価格が上乗せされている面も小さくはありません。
同じインポート生地でも、もう少し価格がおさえめでかつ品質で引けを取らないものもたくさんあります。たとえば、ゼニアやロロピアーナと同じイタリアのブランドでは、カノニコやレダなどは、コスパに優れた生地として知られています。価格の割にクオリティが高く、また日本でも流通量が多いため、比較的抑え目な価格でオーダーすることができるので、まずはこのあたりのブランドから選んでみるのも良いかもしれません。
あるいは、国産のノーブランド(=生地ブランドがついていない)の生地でも、ウール100%のものなら、十分の高品質といえます。イタリア製のような華やかな艶感はなくとも、逆に英国っぽいハリやコシがあり、スーツとしての完成品はとてもかっこいいものに仕上がるでしょう。天然素材100%でありながら、インポートものよりもだいぶ安く済むことが多いので、まさにブランドイメージよりも「質」を重視する方にはおすすめです。
生地の価格感などについては、以下の記事なども参考にしてみてください。