男性のオーダースーツを女性スタッフさんが採寸、気になりますか?

オーダースーツの競争が激化し、大手資本の低価格店がどんどん増えてきた中、女性のスタッフさんもたくさんお見掛けするようになりました。レディスのオーダースーツを提供するお店なら当たり前のことですが、メンズスーツしか扱っていないお店でも、今はたくさんの女性テーラーさんが活躍されています。

その一方で、「紳士服のサイジングは男性がやるもの」というイメージをお持ちだった方からすると、「女性の採寸で大丈夫かな?」と不安に感じる男性もいらっしゃるかもしれません。

そこで本稿では、実際に女性スタッフさんの採寸を受けて複数回オーダーしたこともある私の経験をもとに、「実態」と「私の考え」についてお伝えしていきます。

目次

女性スタッフさんの採寸でオーダーしてみて

まずは私の実体験からお伝えしましょう。

これまで3回ほど、女性スタッフさんの接客で、スーツやジャケットなどをオーダーしたことがあります。いずれもメンズスーツの専門店で、予約して訪れたこともあれば、ふらっと立ち寄ったときにたまたま良い生地とめぐりあえてオーダーしたこともあります。

そして結論から申し上げると、どの回もとても満足のいく商品に仕上がっています。

たとえば最初に女性スタッフさんの接客を受けたイージーオーダー店。スーツ生地やスーツ文化に関する知識が豊富で、「こんなイメージでブレザーっぽいジャケットを作りたいんですけど」と伝えると、次から次へと魅力的な生地を提案してくださったり、「こんな調整を加えると良いかもしれません」と色々教えてくださったりしたことを覚えています。

それで仕上がったジャケットはとても良いものでしたし、サイズ感もイメージ通り。全く問題ないどころか、むしろ女性目線の意見ももらえて、勉強にもなる良いオーダー体験ができました。

女性スタッフさんでデメリットはありえるのか

先ほど女性スタッフさんの接客でオーダーしたことが3回あると述べましたが、うち2回はかなり細かい調整の効く本格派寄りなお店で、うち1回はいわゆる“低価格を売りするお店”でした。

既に申し上げた通り、この3回とも私は満足のいくオーダーができたのですが、まず前者の“本格的なイージーオーダー店”でそのような結果になることは、想像しやすいところでしょう。本格店だけあって、やはりさすがのスタッフさんがそろっています。

一方で気になる方が多いだろうと思われるのは、後者の「低価格店」です。歴も浅いであろう若い女性スタッフさんが担当されたのですが、やはりこちらもサイズ感ばっちりの良いスーツを仕立てることができました。ご自身が着用するファッションではない上、経験もそこまで豊富でないとあれば、そこに難があってもおかしくはないとも考えられるところでしょう。それでも、なぜ満足のいくスーツが仕上がったのでしょうか。

これは、昨今の低価格オーダースーツの作り方が、かなりシステマティックになっていることに起因していると思われます。

一昔前であれば、「熟練のフィッターが感覚で……」という色が強いところもあったオーダースーツ業界ですが、競争激化を受けて、工程の簡略化による低価格化が進んできました。その一環として、採寸を行うスタッフにかけるコストもできるだけ抑えるべく、属人的な体制(つまりスタッフ個々人の感覚や熟練度合いによって採寸の質が変わる)ではなく、誰でも均一なクオリティで採寸ができる仕組みづくりが進んだというわけです。

その範囲の中でも多少の優劣はあるかもしれませんが、基本的には「この部分をこう測る」「こういう特徴があったらこの補正を入れる」というのがルールとして決まっているため、極論、誰が担当しても、同じことをして同じ数値を記録するだけという見方もできるということです。

もちろん、採寸以外のところでの提案力には差が生じうるところでしょう。スーツ生地の素材やブランド、織り、重さなどには知識の差が出やすいですし、顧客の好みに応じて部分的な調整を入れることも、オーダースーツの妙といえるところです。

しかし、オーダースーツ店で働いているとあれば最低限の知識はどなたも身に着けていますし、その上で工程を省略化している(=複雑な採寸を要さない)お店ほど採寸上のミスが極めて起きにくい仕組みになっているため、どんな低価格店でも、基本的にはきちんとしたオーダースーツが仕上がるようになっているのです。

ですから言い方は悪くなりますが、スーツ自体の知識の優劣はあっても、少し学べば、最低限の採寸は誰でもできるようになる(女性スタッフ・男性スタッフ問わず)というわけです。

男性スタッフ・女性スタッフそれぞれ良いところがある

ということで、本格派寄りなお店であればそもそもメンズスーツに詳しいスタッフさんがそろっていますし、そうでない“低価格を売りにしたお店”で働き始めたばかりの方であっても、昨今はそもそも採寸ミスが起きづらい仕組みになっているので、スタッフさんが女性であっても男性であっても安心してオーダーができるといっていいでしょう。たいていのお店でその後のお直しもできますしね。

そしてその上で、女性スタッフさんも男性スタッフさんも、それぞれに良いところがあると思っています。

まずは女性スタッフさんの場合、やはり女性目線での提案をいただけるのは強みといえるでしょう。せっかくかっこいいスーツを着るなら、女性から素敵だと思われることだって大事なポイントの一つですよね。あるいは自分で見て回っているだけでは目に留まらなかったらような生地をふと出されて、「あれ、意外にいいかも」なんてこともしばしばあります。ボタンなど細部の仕様も、女性目線で素敵だと思えるアドバイスができるのは、当然女性だけです。

そして男性スタッフさんなら、やはり自分自身が着用している経験をもとに提案ができるというのは強みです。「その生地で作ったことがあるんですけど、全然しわにならないんですよ」「やっぱり一枚襟のジャケットだと疲れにくさが違います」という話は、顧客と同じスーツを日常的に着用していないとしづらいことですからね。ただそこに、スタッフさん自身の主観も混じりやすいことには注意が必要ですが(これは女性スタッフさんの場合も同様ですね)。

ですから結論としては、女性スタッフさんが担当するメンズスーツでも全く問題はないし、むしろメリットがあるということになります。女性か男性かを問わず、低価格なお店ほど、そもそも採寸ミスが起こりづらい仕組みになっているのが大きいです。ただし、女性か男性かを問わず、知識や接客の温かさなどに優劣は当然出てきます。つまるところ、人柄も含めた個々人の技量によるという話なわけです。

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