自分にはスーツが似合わない……そう悩んでいる方は、意外に少なくないようです。しかし基本的にスーツとは誰でもかっこよく着こなせるものなんです。
「顔が大きくて…」「身長が低くて…」「原因がわからないけどスーツが似合わなくて…」そんな課題について、本稿で解決していきましょう。
スーツは誰でも似合うもの…顔、身長、体型は関係ない!

スーツとはそもそも、体型を美しく見せるために設計された服であり、適切なサイズ感に調整さえすれば、誰でも似合うものです。たしかに、あまりにも太り過ぎている場合は100%似合うレベルまで持っていくのは難しいかもしれませんが、多少太っていたって、逆に痩せすぎていたって、スーツというものは基本的に誰でも似合うものなんですね。
たとえば、顔の大きさが気になる方は、極端にタイトなシルエットを避け、英国調の構築的なスーツを選ぶと、肩にしっかりとしたラインを持たせることができて、顔の大きさとのバランスが取りやすくなります。ジャケットの襟幅をやや広めにすると、より顔の大きさが相対的に目立ちにくくなるでしょう。
身長が低いとお悩みの方でも、そもそも身長に関係なくスーツはかっこよく着られるものだという点は置いておいて、たとえばジャケットのウエストの絞りをしっかりと入れたり、パンツの股上を少し短めに設定したりすると脚が長く見える効果が生まれ、よりかっこよく見えるでしょう。全体的にジャストサイズを意識し、オーバーサイズ寄りにしないことも良いとされています。
つまるところ、「自分にはスーツが似合わない」と感じている方も、選び方次第でいくらでもかっこよくスーツスタイルは着こなせるのです。
それでもスーツが似合わない理由
そんな前提はともかく、「なんかスーツが似合わないんだよな」とモヤモヤをお抱えの方も少なくないでしょう。その原因とは一体何なのか。
そもそもスーツをかっこよく着こなすための前提として、清潔感とサイズ感という絶対的な2つの要素があります。
清潔感については言わずもがなですよね。フォーマル度の高いファッションであるからこそ、ホコリやフケがついていたり、ワイシャツがシワだらけだったり、靴が汚れていたりすると、カジュアルな服装以上に不潔な印象を与えてしまいかねず、「かっこよさ」からは遠ざかってしまいます。
そこで肝心になってくるのは、サイズ感です。

特段の不潔感がなくとも、街を歩くサラリーマンのスーツ姿を見て「かっこいい」と皆さんが感じないのは、サイズ感が影響している部分が大きいです。それこそどんなに高級な生地をつかっていても、サイズ感が合っていなければ、「高そうだなスーツだな」とは思われても、本能的にかっこよく感じるものにはならないのです。これこそが、「何となくスーツが似合わない感じがする」要因なのです。
とはいえ、量販店でスーツを買うとき、試着をして、裾上げまでしているわけですから、「それで十分じゃないの??」と思うのも当然だと思います。
もちろん、そのような量販店で買ったスーツのサイズ感が悪いというものではないですし、それなりに見えるのもまた事実です。しかし、スーツはフォーマル度の高い服装であるため、わずかなサイズの違いでも「不調和感」が生まれやすい特徴があるのです。購入時にサイズが合っているように見えても、ジャケットの丈や袖の長さ、肩や首周りなどに、どうしても少しずつズレが生じている。この微妙なズレの積み重ねが、フォーマル度の高いスーツにおいては「不調和感」を生み出しているということです。街のサラリーマンで、一見問題なくスーツを着こなしているように見えるのに、「スーツ姿かっこいいな」と思うことが少ないのは、これが大きな理由といえます。
オーダースーツという選択肢
そこで、本当にスーツ姿をかっこよく見せるためには、オーダースーツという選択肢がどうしても必要になってくるわけです。
既製品と比べると価格が高めになることが多いものの、その分、自分の体型に合わせたスーツを作ることができ、着たときのシルエットの美しさが格段に向上します。実際、街で「この人、スーツ姿がかっこいいな」と思うことがあれば、それはおそらくオーダースーツを着ている人である可能性が高いです。既製品より少し高いとしても、それだけサイズ感が重要な世界だからこそ、スーツにこだわりを持とうと思ったらまず、オーダースーツに手を出さざるを得なくなるのです。
オーダーの場合、肩幅やウエストの絞り具合、パンツのシルエットなど、当然ながら既製品ではできない調整が利くのですが、こういうちょっとした違いの積み重ねで、スーツの見え方は大きく変わります。「ダサくはないんだけど……」から脱却して、万人に「かっこいい」と思われるスーツ姿をつくりあげるには、オーダースーツは避けて通れないといっても過言ではないのです。
低価格なオーダースーツ店も増えている

でも、オーダースーツってお高いんでしょう?
と、テレビショッピングさながらの声が聞こえてきそうですが、今は各社の競争が働き、かなり安くオーダーできる時代になっています。
たとえば、オーダーの中でも細かい調整が利く順に、「フルオーダー」「イージーオーダー」「パターンオーダー」と主に3段階ある中で、「パターンオーダー」であれば、今はきちんとした品質のものでも2万円台からつくれるようになっています。
パターンオーダーとなると、主に肩幅に合わせて基準となる「ゲージ服」が何種類もそろえられている中から、体に合うものを選び、そこに体型ごとの補正を加えていくやり方になります。一から型紙をつくるのではなく、ある程度工程が効率化されているからこそ、この低価格が実現するようになっているのです。
しかしパターンオーダーといえど、既製品との違いは段違い。スーツにおいて重要な部分はどこも体に合わせた調整ができるようになっているので、まずはパターンオーダーのスーツが低価格で仕立てられるお店からはじめてみるのが良いかもしれません。
低価格オーダースーツ店について検証した記事はこちら(↓)から。
よりかっこよく着こなすために
さて、こうしてサイズ感がしっかり合うスーツをつくることができれば、基本的にはかっこいいスーツ姿の完成です。ですがさらにワンランク上の着こなしを目指すためには、もう少し細かいところにまでこだわることをおすすめします。スーツ好きの方からしたら常識的なことなのかもしれませんが、意外にできていない方が多いです(かくいう私自身が少し前までそうでした…)。
第1ステップ:ネクタイの締め方と袖口のシャツの出し方
そこで第1段階として注意したいのが、「ネクタイの締め方」と「シャツの見せ方」です。
まずはネクタイ。高いスーツを着ていても、意外と適当に締めている人が多いのが現実です。私が偉そうに言える立場ではないのですが、締め方が甘く、首元に隙間ができていたり、ノットが緩い感じになっていたりする人、本当に多いです。きゅっとネクタイを締めて、かつディンプルをつくるだけで、もう印象はがらっと変わります。

続いて見落とされがちなのが、袖口です。本来、ワイシャツの袖をジャケットの裾から1~1.5cm程度見せるのが最も美しい着方とされています。既製品のスーツだと、ジャケットの袖の長さまでは基本的に調整ができない(あるいは有料サービスになる)ため、ジャケットの袖が長くてワイシャツが見えていなかったり、逆にジャケットの袖が短すぎてワイシャツが見えすぎていたりする人はたくさんいます。「そんな細かいことを……」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にきちんとしたバランスの着こなしを見ると、その美しさがおわかりになるはずです。
第2ステップ:仕立てにこだわる

第2ステップとして、オーダースーツの「仕立て」にまでこだわってみることをオススメします。
オーダースーツといっても、すべてが同じ品質ではなく、仕立てのレベルによって仕上がりが異なるのもまた事実。フルオーダー、イージーオーダー、パターンオーダーと自由度の高さによってもランクがありますし、同じパターンオーダーの中でも、ハンドメイドの工程が多いものや、国内縫製で評価の高いブランドを選ぶことで、見栄えも着心地もより良いスーツが出来上がってきます。
特に、首や肩周りの仕立てがしっかりしているスーツは、ぱっと見では違いが分からなくても、全体のシルエットや着心地に大きな影響を与えます。この、はっきりとした言葉にはしづらいフィット感や雰囲気こそが、無意識のうちに「かっこいい」と思わせる要因の一つとなるわけです。
たとえばイージーオーダーでかつ国内縫製でありながらコスパ良くオーダーできる“ワンランク上”のスーツ店なら、花菱などが挙げられるでしょうか。
「仕立てにこだわってみる」という提案を申し上げましたが、必ずしも高級生地を選ぶ必要はありません。もちろん私もイタリアや英国のインポート生地も好きなのですが、国産のノーブランドの生地でも、「ウール100%」なら品質は十分だと思っています。最低限の品質が確保されたウール100%生地なら、そこから生地のレベルを上げる(インポートものにするなど)よりも、仕立てにこだわる方が良いスーツが仕上がる可能性は高いです。まあそれでも、有名ブランドの生地で仕立てたくなるものなんですけどね(笑)。
なお低価格のオーダースーツの場合、基本的にポリエステルが50%程度混ざっている生地が選択肢になってくるので、その場合はできるだけウールに近い見え方の生地を選ぶことをオススメします。今はポリエステルが混ざっている生地でも、ほとんどウールにしか見えないようなものもたくさんありますからね。
ということで、スーツが自分には似合わないとお悩みの方に向けて、「決してそんなことはない!」という厳然たる事実と、よりかっこよく着こなすためのポイントについて、お伝えしてきました。これを機に、オーダースーツにトライしてみるのも良いと思います。素敵なスーツライフをお過ごしください!