クールビズがすっかり浸透して、ビジネスパーソンにとって定番着となりつつある半袖ワイシャツ。しかしこれ、本当はダサいのでは!? そんな懸念をお抱えの方も少なくないかと思います。結論から述べると、「基本的にはダサい」ということになるのですが、本稿ではその理由について述べていきます。
本来のスーツスタイルとは

そもそも伝統的なヨーロッパのスーツスタイルにおいて、「ワイシャツは下着」という扱いであることは、ご存じの方も少なくないでしょう。ですからワイシャツの下にインナーを着ることもないし、ジャケットを着ないでワイシャツ姿で街を歩くということも、原則的にはNGということになります。
とはいえ時代にあわせて、ワイシャツ姿で外に出るヨーロッパ人も増えてきてはいますし、まして高温多湿の日本では、ワイシャツ姿で人前に出ることが恥ずかしいなんて誰も思いませんよね。
ですからいくら伝統あるファッションでも、時代や土地によって違いが出てくるものですし、それが文化として根付いていくものであるのもたしかです。ヨーロッパからアメリカに持ち込まれたファッションも、アメリカならではの進化を遂げたのと一緒ですね。
一方で、「不変」な部分があるのもまた事実。日本ではワイシャツの下にインナーを着るのがふつうだとしても、長袖のワイシャツを着て、しわのないジャケットとスラックスを着ることがきちんとしたスーツスタイルであることは、今でも全世界共通ですよね。時代が変われど、人がスーツとして認知する根幹の部分は変わらないのです。
ですから以下で考えたいのは、半袖シャツとは、今の日本における一つの文化としてどの程度許容されているものなのかという点です。
なお、低価格でもきちっとしたスーツスタイルでかっこよく見せる考え方についてはこちらの記事も参考にしてみてください。
半袖のワイシャツはやっぱりダサい
概念としてダサい

仕事中に半袖のワイシャツを着ていると、周囲に対して失礼にあたるかという点は、ここでは言及しません。営業先には夏でもジャケットを着ていくという方は多いでしょうし、職場内ではどれくらいクールビズが許容されているかにもよるでしょうから、その点は個々人の状況に応じてご判断いただけたらと思います。
ただし、やっぱり半袖のワイシャツは、ダサいとくくられるファッションなのではないかと、私は思うのです。
これまでの歴史上、半袖のワイシャツというものは基本的に存在せず、ジャケットの袖から1cmくらいシャツが見えてこそスーツスタイルが完成するものでした。ジャケットを脱いだとしても、腕を布で隠すことができるものこそがワイシャツで、男性の象徴であり、それゆえ腕まくりが映えるというわけです。
ですから、半袖のワイシャツというものは、高温多湿でかつ「クールビズ」が浸透してきた日本において、紳士服店が新たな売れ筋商品をつくるために流行らせたものに過ぎず、いわば本来のスーツスタイルというものはガン無視したものなんです。利便性を重視して、日本のワイシャツにはポケットがついているのものが多いのと似た話ですが、半袖にしてしまうというのは、それ以上にファッション性や伝統を無視した商品といえるのではないでしょうか。
ですから半袖のワイシャツは、いってしまえば「概念としてダサい」ということです。
たしかに、サイズ感さえ合っていれば、ぱっと見のバランスはよく見えることもあるかもしれません。その意味で、スーツに興味のない方からすると、ダサいとは全く思われないでしょう。しかし、ある程度スーツを知っている人や、スーツ好きな人からすると、“邪道”というイメージを持たざるを得ません。その「半袖シャツ」という概念自体がダサいわけですから、「半袖シャツもかっこよく着られるよ!」という話ではないのです。
だったらポロシャツの方が
「本来のスーツスタイル」というものをいったん無視して、単純にダサいか、ダサくないかという観点から考えてみても、やはりこのスタイルは厳しいと言わざるを得ません。きちっとしたスラックスに、きちっとした雰囲気の襟元や質感のシャツを着ているのに、袖だけが半袖になって急にカジュアル感が出ているわけですから、どうしてもチグハグ感は出てしまうわけです。
そうであるならば、最初からポロシャツ(=半袖として文化が定着しているもの)を着ていた方が、チグハグ感はなくなるはず。ジャケットに合わせやすいきれいめなポロシャツも出回ってきていますが、このように半袖で様になるものであれば、半袖ワイシャツのときのようなチグハグ感は出づらくなるでしょう。もちろん、ポロシャツが許される職場であるなら、という話ですが。
絶対ダメという話ではない
半袖のワイシャツを着るのがNGと、一概に否定するつもりはありません。高温多湿な日本に紳士服業界と社会が適応してきた結果ですし、職場や取引先から許容されているなら、何も問題はありません。その姿が世間の多くの人から「ダサい」と受け止められるわけでもないでしょう。しかし、少なくとも世のスーツ好きの方、あるいはファッション感度の高い方からすると、邪道ゆえのダサさは感じられてしまうという話です。「そんな一部の人に何か思われてもどうでもいい」「それよりも快適に仕事をする方が優先」というのも、当然尊重されるべき考え方だと思います。

ただし、「あえて着ている感」をしっかり演出することができれば、半袖のワイシャツでもかっこよく着られる可能性があることは付言しておきます。わかりやすいのは、外国の筋肉質なモデルさんが、胸元のボタンを開けて着ているようなイメージ。あるいは、色や柄、装飾がついているなど、デザイン性や形の特徴があるような、カジュアル目なシャツでしょうか。そこまで「あえて感」を出せれば十分かっこよく見えるのですが、この記事にたどり着いた方の場合、「あえて」の着こなしには自信がないという方が大半ではないでしょうか。スーツの「下」だけを履いて上だけ半袖ワイシャツという無難なスタイルの場合、なかなかそのようなかっこいい着こなしはできないわけです。
ということで、半袖のワイシャツはダサいのかという懸念をお抱えの方に対して、何の救いにもならない実態についてお伝えしてきました(笑)。このような前提を理解された上で半袖のワイシャツを愛用されるのも良いと思いますし、長袖シャツを腕まくりするか、ポロシャツなどのスタイルに切り替えるのもアリだと思います。この暑い夏をどう過ごすか、皆さまの参考になれば幸いです。