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全国に店舗を構えるオーダースーツ店のHANABISHI(花菱)。やたらと褒めたたえる記事が散見される一方で、その実態については断片的にはわからない部分も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな同店の実態と「お得なのか」という点について、気づけばオーダースーツを10着以上つくっている私が、他店と比較しながら検証していきます。

花菱の特徴
最大の特徴「国内縫製」
花菱は、1着で最低価格は税込4万6000円と、SADA等のような最低価格帯よりはワンランク上がるものの、比較的リーズナブルなオーダースーツ店のとして位置付けられます。
その中で、他のブランドと異なる最大の特徴は、商品すべてが日本国内で縫製されている点にあります。
やはり低価格帯のオーダースーツとなると、コスト削減を目的として海外の工場に製造を委託するブランドが溢れています(ユニバーサルランゲージなども基本は中国工場です)が、花菱は国内の熟練職人による縫製を、一番の強みとしています。
「たかが工場」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これはけっこう大きなこと。
良いオーダースーツ店を見極める要素として、どうしても価格に目が行きがちですが、それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのは、仕立てのクオリティです。
採寸による数字の部分だけでなく、細部の柔らかい縫製の仕方だったり、サイズ感の細かい調整だったりが、見栄えや着心地に大きく左右してくるわけです。
この品質差こそが、オーダースーツ店ごとの価格差に直結しています。
その意味で、オーダースーツにおける「純国産」というのは、かなり大きい意味を持つのですね。
どうしても価格にこそ目が向かいがちですが、低価格オーダースーツ店によくある“安かろう悪かろう”になりがちな中国産を採用しないのは、それだけ品質重視を重視しようということなのでしょう。
「イージーオーダー」を採用
仕立てのクオリティに関連する話ですが、花菱では、「パターンオーダー」よりも細やかなカスタマイズができる「イージーオーダー」が採用されています。
ユニバーサルランゲージやグローバルスタイル等が採用しているパターンオーダーは、オーダースーツの中では最も自由の効かない扱いで、形の決まったジャケット(ゲージ服)で一番自分に合うものを着て、そこから着丈や袖丈などを微調整していく仕様です。
一方でHANABISHIが採用しているイージーオーダーは、パターンオーダーと同じくゲージ服から調整を加えていく手法ではあるものの、サイズ調整やデザインの調整などの幅がかなり大きくなっていて、パターンオーダーよりも格が一つ上の扱いとなっています。
さらに上には、よく言われる「フルオーダー」というものがありますが、これはかなりの価格になってくる。
そう考えると、イージーオーダーは、十分手が届く価格帯でありながらも、オーダースーツらしく様々な自由が効く作り方だと言えるでしょう。
やはりその意味でも、最低価格帯の他店に比べたメリットがあるように感じられます。
毛芯を標準採用
低価格帯のオーダースーツだと「接着芯」が多い中、花菱は基本的に「半毛芯」か「総毛芯」が使われています。毛芯についての詳しい説明はここでは省きますが、毛芯が入っている方が丈夫で立体感も生まれやすいという認識で問題ないかと思います。見えないところにもきちんとこだわっているということですね。
納期も及第点
花菱でのオーダースーツ製作の平均的な納期は、約4、5週間とされています。
「1か月半」くらいが主流となりつつある中で、「やや早め」と言えるのではないでしょうか。
対象年齢層
花菱としては、「幅広い年齢層に対応しています」と謳っていますが、実際は、20代後半から、50代くらいまでがボリュームゾーンと言えるでしょう。
社会人になって間もない頃だと、少し背伸びをしているくらいの価格帯に感じられるかもしれません。
ですが、数万円程度で高品質なスーツをコスパ良く購入できることを考えると、20代後半くらいからは、十分対象になってくるのではないかと思われます。
その上で、国内縫製によるイージーオーダーとなれば、品質は申し分なし。店内の雰囲気も含めて、年齢の上限はないと考えていいでしょう(60代以上でもスーツにこだわりのある方は同店を利用しています)。
価格について
花菱の平均的な価格帯
花菱のオーダースーツの価格は、選択する生地やカスタマイズの内容によって大きく異なりますが、最安価格は、4万6000円。麻布テーラーと同水準ですね。
その上で、生地のランクが上がっていくほど高価格にはなりますから、平均的な価格帯としては、5万円程度から20万円くらいまでが、売れ筋の価格帯と言えるでしょう。
最初は低価格帯で試しつつ、良いものがつくれたら、少しずつ生地のランクを上げていくと良いのではないでしょうか。
なお花菱は、7万7000円以上のスーツの場合、初回限定で2万2000円の割引がききます。つまり8万円近くするスーツが5万5000円で買えるわけですから、ちょっとセコいようではありますが、最初に買うなら絶対にこの7万7000円の価格帯のスーツがダントツのコスパといえます。ちなみにこれ以下のスーツの場合も、1万円引きがきくそうです。
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生地ブランドごとの価格イメージ
最低価格帯は、4万6000円。
その他インポート品については、例えばゼニアやロロピアーナなどの“最高級ブランド”だと、だいたい14、5万円くらいから。
ハイコスパの代表格、カノニコがだいたい7、8万円くらいから。
他のイタリアブランドには、もう少し安く買えるものもあります。
例えば、ユニバーサルランゲージと比べると、同社の最高級ラインである「ハンドメイド」と同じくらいの価格帯ですから、やはり品質と価格のバランスは優れていると言えそうです。
グローバルスタイルの通常ラインと比べると少し価格は上がりますが、さすがに縫製の質が段違いですから、ここは何を重視するかで使い分けたら良いかと思います。
せっかくのオーダースーツ、やはり品質にも最低限はこだわりたいということであれば、花菱はまさにバランスがとれているブランドで、“ちょうど良さ”が際立っているのではないかと思われます。
店舗に行ってみた
店内の雰囲気
店内はこんな感じで生地が並んでいます。


高級感がありますね。
こんなサイズ感の生地の選択肢も。

スタッフの年齢層
何店舗から訪れた限り、20~40代くらいのスタッフさんが常駐しているようです。
ユニバーサルランゲージやグローバルスタイルよりは上の世代の方にも対応できるような布陣がそろえられている印象です。
接客
こればかりは私の主観も含んでしまいますが、何店舗から訪れた限り、かなり丁寧な印象を受けました。
ユニバーサルランゲージやグローバルスタイル、麻布テーラーなどの巨大スーツ店にはかなりのムラを感じていました(もちろん良い店員さんもいましたよ!)が、どの店舗でも丁寧さを感じる意味では、花菱の優位性を感じます。
特に、オーダースーツにそこまで慣れていない方にとっては、どの店舗でも安心して訪問できるといえると思います。
と、このあたりは私の主観も含みますから、気になる方は、まずはお店(全国18店舗あり)で説明を聞いてみてはいかがでしょうか。「訪問したら買わないといけない!」なんてことはありませんから、話を聞いたり、生地を見てみたりするとイメージもわいてくることでしょう。まずは気軽にネット予約をしてみると良いかと思われます。
花菱の悪いところ
逆に花菱のデメリットと思われる点についても挙げておきます。
価格については、最安スーツ店と高級店との間で、バランスがとれていると思うのですが、オプション一つひとつに追加料金がかかる点は、デメリットと言えるかと思います。
水牛ボタンやAMFステッチ、本切羽、キュプラ裏地など、定番のオプションには、どれも追加料金がかかってきます。
どれも有料であることがふつうのオプションではあるものの、一部には、そのうちのどれかは標準搭載しているお店もあることを考えると、上記のようなオプションにこだわりのある場合はマイナス点になると思われます。
なお、麻布テーラーも、どのオプションにも追加料金がかかってきますが、麻布テーラーよりは、花菱のオプションの方が安めに抑えられていますね。
評判と口コミ
ここまで挙げた特徴を踏まえつつ、実際の口コミなどを参照してみると、以下のような声が目立ちます。
よく挙がる「良い声」
やはり、「国内工場を利用した縫製の品質」と、「イージーオーダーによる細やかなカスタマイズ」に対する満足度が目立ちます。同店が強みとしている部分ですね。
それから、スタッフの丁寧さやアフターケアの手厚さに関しても高い評価が目立ちます。
初心者として安心して訪問できる声がそろっている印象です。
次の部署は全員濃紺のスーツ着てそうな気配を感じたので花菱さんでオーダー。
初めてラペルをセミノッチにしてみたけど、ラペルの面積が増えていいかもしれない。
ラペル幅9.5だけど肩幅との比率のせいか案外普通ですね。良き。 pic.twitter.com/foSng0B7Co— 黒猫文具店@アナログ寄りのガジェット好き (@takuthke2) June 12, 2022
スーツGET('-'*)
花菱は2回目だけれど、値段と品質のバランスは良いんじゃないかなと勝手に思ってます。
そして鰻屋に。。。— Keisuke_Yo (@Keisuke_Yo) July 11, 2010
ご無理なさらず〜🙏❤️❤️
てか
花菱のスーツ!!
さすが!
国内縫製ですもんね😆❤️❤️— 🍁嶋ちゃん。 (@To2swkOiXeyzTmd) November 9, 2018
生まれて初めてイージーオーダースーツ作った。 老舗「HANABISHI(花菱)さん」。 初めてなので緊張したが、担当者が親切丁寧な接客をしてくれたので、安心して打ち合わせ出来ました。仕上がりが楽しみ♪ HANABISHIさん、有り難うございましたぁ~\(^O^)/
— Yanako (@yanako92) November 30, 2013
イージーオーダーなら花菱もなかなか。
— さくらざわざわもりのガンコちゃん (@daily_idletalk) October 17, 2012
花菱オーダースーツ。
初めてブラウンスーツにしました。意外とビジネスユースでいけそう。 pic.twitter.com/eUUffjJ8oS— 黒猫文具店@アナログ寄りのガジェット好き (@takuthke2) November 28, 2020
よく挙がる悪い声
一方で不満として挙がるとしたら、「価格が少し高め」という声でしょうか。
おそらく、ユニバーサルランゲージやグローバルスタイルなどの「最低価格点」と比較してのことでしょう。
ここは上記の通り、オーダースーツに何を求めるかによるすれ違いかと思われます。
どちらも人気店であることに違いはありませんから、目的に応じてお選びいただけたらと思います。
劣等生の登場人物なんや笑
てか花菱でスーツ買ってんの?
ええ値段するよな、高い— やなぴろ (@yanapiro) May 8, 2018
池袋の花菱でスーツ二着と予備パンツ二つづつオーダー。10万は安いか高いか悩ましいところ。寸法が結構かわったので仕上がりが楽しみ。
— kuma_rhm9 (@kuma_rhm9) August 23, 2012
やっぱたっけえ花菱のスーツとワシントンの革靴履いてるだけでちょっと優越感浸れていいわ
高い服ってこういうことだよね— 🍐 (@2kt_q) May 3, 2024
自社工場は閉鎖した影響は?
よく挙がる疑問として、「自社工場の閉鎖」についても触れておきましょう。
かつて花菱は自社工場を運営していましたが、2021年に閉鎖しています。これにより一部の顧客からは品質への影響を心配する声もありました。
しかし、結局どこで製造することになったのかというと、なんとあの「御幸毛織」。
「服地のミユキ」として、生地メーカーとしては日本を代表する会社であることはスーツ好きには知られた話で、私も同社製の「ナポレナ」などの生地でスーツを仕立てることにあこがれています…。
つまりは国内最高峰の品質レベルを持つ会社ですから、花菱の戦略として自社工場をたたんだとしても、仕立てのクオリティについては安心と考えて良いでしょう。
まとめ
ということで、「花菱の実態」について、様々な観点から述べてきました。
同社の特徴をまとめると、こんな感じ。
・「国内工場の縫製」と「イージーオーダー」により、“最低価格点”よりも仕立ての良いスーツが仕立てられるメリットはかなり大きい。
・価格はオーダースーツ界ではかなり抑え目で品質とのバランスが良い。
・どの店舗でも接客が安定しているため、初心者こそ安心して訪問できる。
と色々言っても、なかなかイメージがわかないところもあるでしょう。
まずは全国の中で最寄りのお店に行ってみて、色々と説明を受けてみるのが一番です。
繰り返しになりますが、「訪問したら買わないといけない!」なんてことはありません(笑)から、まずはネットで来店予約をして、話を聞いてみたり、実際の生地を見てみたりすると良いと思います。