既製品のスーツもオーダースーツも、どちらにも当てはまる話ではあると思いますが、仕事で着る機会が多いわけでなければ、「着まわしやすい1着におさえたい」という方、少なくないでしょう。
その場合、色や柄はどう選ぶべきなのか。
これまで10着以上のオーダースーツを仕立てた経験も踏まえながら、一つの考え方をお示ししていきます。
万人にとっての正解
スーツの一着目として買うべき色や柄は、ほぼほぼ万人にとっての正解が決まっています。
だいたい想像がついている方もいらっしゃるかもしれませんが、そう、ダークネイビーの無地です。

日本人はなぜか黒のスーツを買いがちなところがあるのですが、本来は冠婚葬祭という極めてフォーマルな場で着るための色であり、日本よりも長いスーツ文化を持つ欧米ではビジネスシーンなどで黒いスーツを着る人はまずいません。欧米でのスーツの定番色といえば、ネイビーとグレーです。この2色こそがスーツの王道であることを、まずは前提として理解しておいていただけたらと思います。
その上で、グレーの場合は、膨張色であり、また色味によっては威厳が出やすい(おじさんっぽく見えやすい)ことから、若い人には少し難易度が高いケースがあります。定番色でありつつも、実は誰もが容易に着こなせる色ではないんですね。

一方ネイビーは、さわやかで誠実な印象を与える色であり、若い人から高齢の方まで、人を選びません。ワイシャツや小物などもどんな色でも問題がなく、万能中の万能の色だといえます。
ただし当然ながら、あまり明るすぎる場合はカジュアル感が増してしまいますので、やはり定番ど真ん中を打ち抜くなら、暗めのネイビーが大正解ということになるわけです。
リクルートスーツ感が出ないように
ただし、暗い色味になるほど、リクルートスーツ感が出てくるリスクがあります。
それを避けるためには、
・黒に見えるレベルの暗さは避けること
・明らかに安っぽい生地のものは避けること
この2点には注意するようにしましょう。
ただこれは、それほど難しい話ではないはずです。逆に言うと、「リクルートスーツがほしい」という探し方をしなければ、リクルートスーツ感が出てしまうリスクはそれほど高くはありません。特にオーダースーツ店で生地を選ぶ際は、「ビジネスで使えるダークネイビーを探しています」などと店員さんにきちんと伝えれば、失敗することはないはずです。
「最強色」である理由
ダークネイビー×無地が最強といえるのは、どんな色とも合わせられる万能性にあります。
たしかに、スーツ自体には大きな特徴はないかもしれません(生地や仕立ての質が良いと、ダークネイビーでも明らかに良いスーツに見えるものですが、ここでは言及しません)。
しかしだからこそ、合わせるワイシャツやネクタイなどによって、印象を大きく変えることも可能なスーツともいえるわけです。
たとえばド定番の白シャツを、これまたド定番のサックスブルーのシャツに変えるだけでも、フレッシュな印象から、こなれた雰囲気にガラッと印象が変わります。シャツの色味は大して変わらずとも、比べるとけっこう印象は異なるのではないでしょうか。


あるいはロンドンストライプのシャツに変えると、さらにスーツを着こなしている感じが出る上、柄のアクセントが良い具合に馴染み、おしゃれな雰囲気が強まります。こういうシャツも自然に落とし込んでくれるのが、ネイビー無地スーツのメリットといえます。

さらにネクタイという要素が組み合わさると、また大きく印象が変わってきます。ご覧の通り、白シャツでもネクタイの色や柄によってだいぶ雰囲気が変わってくるくらいですから、シャツとの組み合わせも考えると、その可能性は無限大。ネイビー無地の万能性だからこそ実現することなわけです。


↑同じレジメンタルタイでも、色味で印象は大きく変わってきます。

↑印象の強い小紋柄もネイビー無地ならばっちりハマります。


↑シャツ×ネクタイの組み合わせは無限大。そしてダークネイビーはどんな組み合わせもうまく落とし込ませられる包容力を持っています。
とにかくおしゃれ感ばかりを重視して、最初からブラウンやカーキ系の色だったり、あるいはネイビーでも柄が入ったスーツを買ってしまうと、合わせられるシャツやネクタイが限られてきます。また、スーツ自体の特徴が強まることで、いくらシャツやネクタイを変えたとしても、周りから見ると「あのスーツをまた着ているな」感が出てしまいやすい。
1着をなるべく着まわすという場合、なるべくシャツやネクタイによって印象は変えたいものですよね。だからこそ、最強の万能性を誇るダークネイビー×無地を選ぶべきなわけです。
「地味すぎるのでは…」という懸念をお抱えの方の場合、たとえば生地をウール100%の上質なものにしたり、仕立ての良いオーダー店でつくったりすれば、それだけでこなれた感じが出てきます。あるいは上記の通り、シャツやネクタイによっていくらでもおしゃれな雰囲気を出すことができますから、特に心配する必要はないでしょう。
もう一つの万能色
先ほど、スーツの定番色として挙げたグレーについては、“難易度の高さ”についても言及しましたが、色味を暗くすることで、万能性が格段に増します。いわゆるチャコールグレー(黒に近い濃いグレー)といわれる色味で、こちらの無地もかなり着回しが利きます。合わない色はほとんどないので、ダークネイビーよりもこちらの方が好みだという方は、もちろんチャコールグレーを選んでいただくのもアリです。

↑写真の撮り方が悪く色味がわかりづらいですが、こちらも万能なチャコールグレー。
たしかに、ダークネイビーがあまりにも万能すぎるがゆえに、一着目として強く薦められることが多く、「せっかく持つ一着がダークネイビーかぁ」とあまりテンションが上がらない方もいらっしゃるかもしれません。そういう場合は、チャコールグレーにしておくと、定番かつ万能でありながら、意外に持っていない人も多い色であるため、ちょうどよいと感じる方も多そうです。
まあこのあたりは、ご自身の好みでお決めいただいて全く問題ありません。ただし、オーダースーツ店でも既製品のお店でも、選択肢はネイビーの方がたいてい多いです。一口に「ダークネイビーの無地」といっても、生地の種類はたくさんありますからね。実際に店舗に足を運んで、ピンとくるものをお選びいただくのがよいかと思います。


