20代といえば、就活を始めるタイミングや新社会人になるタイミングなど、スーツを買う必然性に迫られる機会がけっこうありますよね。その中でも、「会社でも慣れてきた頃」になると、かっこよく小慣れたスーツを着たいと考えるものでしょう。
しかし一概に「かっこいいスーツ」といっても、高級ブランドから、量販店や若者向けスーツ店など様々な選択肢があります。
そんな中からどんなスーツを選ぶべきなのか。20代が選ぶ際のポイントについて、現実に即してお伝えしていきます。
20代で選ぶべきスーツのブランド
本稿の結論から述べてしまうと、「スーツスクエア」などの若年層向けブランドと、低価格(2万円程度~)のオーダースーツブランドの2つから選ぶというのが、最有力な選択肢となってきます。
まず本章では若年層向けブランドの既製品について検証してみましょう。
「安いけどかっこいい」を求めたい
前提として、社会人になって間もないような20代で、スーツに使えるお金がいくらでもあるという方はかなりの少数派でしょう。もちろん、給与水準の高い会社で働く独身の20代後半の方など、例外はいくらでもありますが、基本的には「スーツに10万も20万もかけられない」という方が大多数ではないでしょうか。
ですから、20代のスーツ選びとなると、「ちゃんとかっこいいけどできるだけ安いスーツを」という選び方がベースになってくるわけです。
では安いスーツブランドはどこなのか……と考えたときに、真っ先に上がるのが「洋服の青山」や「Aoki」、「コナカ」などの量販店でしょう。紳士服を専門に扱う大手として、安定感があるのはたしかです。
しかし、これらのスーツがかっこいいのかといわれると、そうは言い難い面があります。
そもそもスーツとは、いわゆる「シルエット」によってかっこよさの大部分が決まるといっても過言ではありません。それはサイズ感だけでなく、スーツの型(パターン)などによっても左右されるものなのですが、この「型」の部分が“全世代向け”につくられているもので、“かっこよさ”を追求したものにはなっていないんですよね。たとえば青山が展開する高級ライン「HILTON」などは多少違う部分もありますが、ベースは「青山」としてのつくりですし、値段の張るものも増えてくるので、決して悪いものではないですが、20代にオススメするものとしては優先度は下がってきます。

若年層向けブランドの強み
それゆえに、全世代型の量販店よりも、若年層をメインターゲットとしている大手どころのブランドを選んだ方がコスパが良いということになってくるわけです。
たとえば、青山が展開する「スーツスクエア(旧スーツカンパニー)」は、20~30代を主な顧客層として、モダンでスタイリッシュなスーツを低価格で展開しています。カノニコやレダなどイタリアのインポートものの生地や、最近では尾州のウール100%生地などが5万円前後で購入できるので、かなりお得感があるといえるでしょう。
昨今では、ポリエステルなどの化学繊維が含まれている生地でも“ウール見え”するものが増えていますし、一概に「インポートものだからかっこいい」と断ずることができるものでもないのですが、同ランクの生地だともっと高く売られていることが多いので、お得だという話です。たとえばユナイテッドアローズやSHIPSなどのセレクトショップが展開しているスーツの場合、カノニコやレダなどのブランドでも10万円近くかかってくることがほとんどです。もちろん、それらの型(パターン)がかっこよく作られているというメリットはあると思いますが、その点若年層向けのブランドであれば、大きく負けていることはありませんからね。

なおはるやま系列のP.S.FAや、コナカ系列のスーツセレクトなどもモダンなつくりで良いと思われるものの、やはり上記で述べたスーツスクエア(旧スーツカンパニー)が頭一つ抜けている印象です。青山が業界最大手であるからか、よりコスパに優れた商品が多いというのもあるのですが、何より割引されている商品が多いんですよね(笑)。通常のショップでも20~30%、下手したら50%以上の割引になっている商品がよく置いてありますし、アウトレット店舗ならそんな割引品だらけです(参考:スーツスクエアの上野アウトレットで格安REDAジャケットを購入)。こうした点を含めると、若年層向けの中でもスーツスクエアが一歩リードといった印象です。
高級ブランドという選択肢
一方、いわゆるブランドもののスーツはどうなのか、という点についても触れておきましょう。
ポールスミスやタケオキクチなどのファッションブランドが、“ブランドとして”つくっているスーツですね。
高いものだと、アルマーニやバーバリーなどがイメージされるところでしょうか。
ブランドスーツのコスパは…
こうしたファッションブランドのスーツも、たしかにかっこいいですよね。しかしコスパの面で見るなら、正直オススメはできません。というのも、スーツにおいては、ブランド品を選ぶメリットがあまりないからです。
まず大きいのは、「ブランド代」が価格に転嫁されているにもかかわらず、スーツだとブランドであることがわからない点です。
単純化してお話しすると、例えばポールスミスのカジュアルな服を着ていたら、ロゴや、その独特な色使いで、すぐに「ポールスミスの服だ」とわかることでしょう。多くの人は、それを目的に買うからこそ、「ブランド代」として少し高くなっていたとしても、甘んじて受け入れているわけです。
ですが、これがスーツになると、基本的にはどれも10万円以上はかかってくるのに、その仕様上、ぱっと見でわかる部分に、ロゴや、そのブランドを象徴する特徴が出せないのです。せっかくブランド代がかかっているのに、そのメリットをあまり享受できないということです。
もちろん、そのブランドのスーツだからこその型紙など、何かしらの特徴はあるとされています。でも正直、普通の人がその形を見て、「あ、ポールスミスのスーツだ!」なんてわかりません。

しいて言うなら、ポールスミスは裏地にものすごく特徴があるので、それが見えればわかる人もいるかもしれませんが、ふつうに着ていたら裏地は「チラ見え」が発生するかどうかでしかありませんし、まして他のブランドなら、ふつうの人がブランドを判別する要素は限りなくゼロに近いのです。
実際、この記事をお読みいただいている皆様の中も、他人のスーツを見て「いいスーツだな」「かっこいい色(柄)だな」と思うことはあっても、「あそこのブランドかな」と思うことなんて、ほとんどないのではないでしょうか。
たしかに、ブランドを支えているデザイナーがつくるスーツの型(パターン)が優れているという面もあるでしょう。しかし、青山やAokiなどの“全世代型量販店”に比べたら差は大きいかもしれませんが、きちんとモダンなつくりをしているスーツ店であれば、それほど大きな差は感じられないはず。
「ブランド代」にお金を払うよりも、より良い生地を選んだり、あるいは次章で紹介するオーダースーツを選ぶ方が、よほど理にかなっているといえるのではないでしょうか。
低価格のオーダースーツこそが最強?

ここまで、既製品スーツを選ぶ際のポイントについてお伝えしてきました。
しかしかっこよく、かつ安いスーツの選択肢としては、低価格のオーダースーツこそ最強であろうと、私は確信しています。
上記で、スーツのかっこよさはシルエットが大部分を占めると申し上げましたが、シルエットを左右する一番大事な要素こそ、「サイズ感」です。既製品の場合、肩幅などごく限られた部分にあわせて決められたサイズの服を選び、パンツの丈を調整したら終わりなので、どんなに標準体型に近い方でも、必ずどこかにズレが生じています。袖の長さやジャケット自体の長さ、ジェットの絞り具合やパンツの形など、一見して違和感がなくとも実はけっこうズレはあって、その積み重ねが「かっこよさ」から遠ざけてしまうのです。
その点オーダーなら、そのような細部まで体に合わせたサイズ感でスーツが仕立てられるのですから、少なくとも既製品よりは適したサイズ感のスーツになるわけです。たしかに、全く同じ生地でつくられたスーツなら、既製品よりオーダー品の方が値がかかってしまうものです。しかし、スーツにおいては生地のランクよりもサイズ感の方がはるかに重要であることは間違いがありません。
今は2万円台から高品質なオーダースーツが作れる時代
まして、昨今はオーダースーツ市場で競争が激化していて、かなりの低価格で買えるようになっているんです。
これまで10着以上の低価格オーダースーツをつくってきた私の経験からすると、きちんとした品質を保った上での最安値は、1着2万5000円程度です。これ、既製品でも最安ランクといえるのではないでしょうか。現状で最もコスパが良いお店としては、イージーオーダー、半毛芯を標準搭載した上で、1着2万5000円程度から購入できるカシヤマ(KASHIYAMA)が最有力といえるでしょう。詳細はこちらの記事(カシヤマは本当に安いのか 他店と比較してわかった評判の実態【オーダースーツKASHIYAMA】)にて検証しています。
というわけで、かっこよく、安くスーツを着こなしたい20代に向けて、選び方のポイントをお伝えしてきました。高いお金は出さずとも、スーツはいくらでもかっこよくできます。ぜひ低価格オーダースーツで人生をより豊かにしてください!