オーダースーツといえば、納品までにそれなりの時間がかかるイメージをお持ちのことでしょう。しかし競争が激化している昨今では、納期をできるだけ短くしようというお店が増えていて、一部では「最短1週間」というところも。
とはいえ、ネット上に出ている「価格比較表」のような情報を鵜呑みにすると、実際は表記以上の時間がかかったり、想像以上の追加料金がかかったりすることもあるのが実態です。
そこで本稿では、これまで10着以上のオーダースーツをつくり、かつ多くの店舗を訪れてきた立場から、「本当に納期の早いオーダースーツ店」について、実態に即した比較・検証を行っていきます。とにかく早くオーダースーツがほしい!という方は、ぜひ参考にしてみてください。
オーダースーツの納期の相場
そもそもオーダースーツには、比較的価格が安く、製造工程も簡素化されているものから順に、「パターンオーダー」「イージーオーダー」「フルオーダー」という種類があります。パターンオーダーは、もともと決まった型紙で基準となるゲージ服の試着をして、丈感などを調整していくものである一方で、フルオーダーは型紙を1からつくるものなので、基本的にはより体に合ったものがつくれるといいます。いわゆる「仮縫い」というものがあるのもフルオーダーだけですね。
肝心の納期について、ネット上では「パターンオーダーは2~3週間」「イージーオーダーは3~4週間」「フルオーダーは1~2ヶ月」なんていわれたりもしますが、あまり実態に即しているとはいえません。
実際はお店によってばらつきがあるので、パターンオーダーでも1か月半くらいかかることもあれば、イージーオーダーでも1か月足らずで仕上がることもあります。あるいは通常の納期が1か月程度だとしても、発注が重なったり、GWやお盆などを挟んだりすると1か月半近くこともあります。
つまりはお店によって違うし、時期や工場の込み具合などによっても大きく変わってくるということなので、まずはオーダーしたいお店の基本的な納期を確認した上で、「今の時期にオーダーするといつ頃の納品になるか」と問い合わせないと、実態はわからないものなんですね。
とはいいつつも、「相場」というものはあります。
パターンオーダーとイージーオーダーのお店にはそれほど大きな差はなく、どちらも「1か月~1か月半程度」というのが相場だと考えて良いでしょう。もう少し厳密に言うなら、パターンオーダーは1か月前後、イージーオーダーは1か月強から1か月半くらいでしょうか。工場が空いていたり、祝日がほとんどないタイミングだったりすると1か月をきることもよくありますし、逆にどんなに混雑している時期でも最大1か月半くらい見ておけば納品されるお店がほとんどだと思われます。
これがフルオーダーになると、だいたい2、3か月程度が相場になるでしょうか。フィッティングから仮縫いまでに1か月程度かかって、そこからさらに1、2か月かかるイメージです。
ですから、早く完成品がほしいという場合は、基本的にフルオーダーは選択肢から外れることになります。パターンオーダーやイージーオーダーのお店で、特に「納期の早さ」を売りにしているところを選ぶということになってくるでしょう。
ちなみに、パターンオーダーだから質が低い、フルオーダーだから質が良いという単純なものでもなく、「スーツの良さ」とは、仕立てのレベルや調整を入れられる箇所、生地やその他のオプションなど様々なによって変わってくるものです。パターンオーダーでもハイクオリティなスーツがつくれるお店もたくさんありますから、この分類はあくまでも一つの要素くらいに思っておいた方がよいでしょう(もちろん大きな要素ではありますが)。
納期の早いオーダースーツ店の比較・検証
では実際に、納期の早いオーダースーツ店の現実的な選択肢とはどこになるのか。いくら納期が早いといっても、仕上がるスーツの質が低いとあれば本末転倒ですよね。またあまりにも高額になってしまうようであれば現実的な選択肢とは言い難いでしょう。
そこで本稿では、これまでオーダースーツを10着以上つくり、さらにそれ以上の数々のお店を実際に訪れてきた私の目線で、「納期が早い」「スーツの質もしっかりしている」「価格が抑え目」という3条件を満たすお店をご紹介します。
DIFFERENCE

DIFFERENCE(ディファレンス)は、紳士服大手「コナカ」が提供するオーダースーツブランドです。「パターンオーダー」を採用しているので、ユニバーサルランゲージやグローバルスタイルなど他の大手どころと同じ仕様のオーダーですね。このあたりのオーダースーツ店はどこも「1着3万3000円程度」「2着セットなら5万円程度」というのが最低価格として横並びになっているので、実質的に1着あたり2.5万円程度でオーダースーツがつくれるということになります。
その中でDIFFERENCEの通常納期は、1か月前後とされています。これはまあふつうですね笑。
しかし、5000円程度の有料サービスとなりますが、「納期短縮サービス」を使うと、これをさらに10日程度短縮することができます。これを含めると、時期によっては最短で2週間程度で納品されるタイミングもあるようですから、オーダースーツとしてはかなりのスピードといえるのではないでしょうか。
オーダースーツSADA

こちらも有名どころでしょう。60年以上にわたりスーツ業を営んでいる業界の中心的存在であり、同社製品に限らず様々なブランドのスーツの縫製を担う工場を保有しているため、「実はSADAでつくられていた」というスーツが、世の中にはけっこう溢れています。
しかも、フルオーダーのスーツが、1着2万円程度からつくれるという破格の仕様。もちろん、「仮縫い」などがある本格的なフルオーダーではないのですが、体にあわせた型紙からつくってくれるという意味では、紛れもないフルオーダー。これを2万円でつくれてしまうというのは、けっこうな価格破壊といえそうです。
こちらの納期は、基本は1か月前後とされています。DIFFERENCEと同じく、標準のスピードですね。
しかしSADAもまた、納期短縮サービスがあります。DIFFERENCEの場合は、「1週間から10日程度短くできる」というものでしたが、SADAの短縮サービスはなんと、10日間か、最短では3日間でスーツが完成する場合があります。納品まではさらに郵送に要する日数がかかるとはいえ、1週間以内に納品される場合もあるので、もはや既製品の裾上げより早いくらいですね……。ただし「10日間お急ぎ便」は税込み7,700円、「3日間超特急便」は税込み33,000円の追加料金がかかります。もともとが安いとはいえ、少しネックに感じられる方もいるかもしれません。
スーツセレクト

こちらもDIFFERENCEと同じく、『コナカ』の運営のパターンオーダー店。ですから大手どころでお決まりの「1着3万3000円程度」「2着セットなら5万円程度」というのが最低価格になっています。
こちらはAI技術を活用したスマホ採寸サービス「AI SPEED ORDER(AIスピードオーダー)」を導入していていて、「10分採寸、10種類厳選生地、10日間」というサービスを売りにしています。
ただ、スピードオーダー自体に追加料金がかかるわけではないのですが、この枠組みで選べる生地は4、5万円程度~となってしまうので、上記の最安生地に比べると少し割高感があるかもしれません。
生地によって、「10日間」「2週間」「3週間」と納期が決まっているので、とにかく早くスーツをつくりたいという場合、生地はけっこう限られることにはなってしまいます。
KASHIYAMA(カシヤマ)

アパレル大手「オンワード樫山」が関東を中心に展開するオーダースーツ店です。こちらもオーダースーツ大手の一角といっていいでしょう。イージーオーダーを採用しておきながら、料金は上記パターンオーダー店と変わらず「2着5万円程度」を採用しています。
こちらを最後にもってきたのには理由があって、これまでにご紹介したオーダースーツ店は、なんだかんだいって早い納品のためには追加料金的なものがかかっている一方で、カシヤマの場合は「単純に納期が早い」という特殊性があります(笑)。
その納期は、なんと最短で1週間。実際に店員さんに確認してみると、どうやらこれは時期によるとのこと。1年を通して、2週間程度で仕上がる時期が最も多いようで、これが繁忙期になると3週間程度、閑散期になると1週間で仕上がるようです。つまりはだいたい2週間前後だと思っておけばいいということですね。
だいたいスピード納品のためには5000円以上の追加料金がかかることが多い中、追加料金がかからないというので、早い納品をお求めの方には最適解といえるかもしれません。
というわけで、納期の早いオーダースーツ店について、比較・検証を行いました。一概に「価格表」として記しても実態とは異なってしまうことがおわかりいただけたのではないでしょうか。とにかく早くオーダースーツがほしい!という方は、ぜひ参考にしてみてください。