勝友美氏「Re.muse」のスーツの値段について検証してみた

YouTubeでも知られる実業家、勝友美氏が展開するオーダースーツ店「Re.muse」。主にエグゼクティブ層を対象としていて、通称「ヴィクトリースーツ」ともいわれる同社の商品ですが、YouTube動画を見ていても、なかなか値段がはっきりわからないんですよね。

そこで同社のスーツの価格がどの程度のものか、そして商品はその価格に見合うものなのか、検証してみました。

目次

「Re.muse」の特徴

大坂と東京に店舗をかまえる「Re.muse」ですが、まずはそのオーダースーツの特徴を検証してみましょう。

イージーオーダーか、フルオーダーの“廉価版”か

まず、明言はされていないものの、公開されている情報からして、同社が提供するオーダースーツは「イージーオーダー」か、定義の仕方次第では「フルオーダー」という分類にも入りうるようです。たとえば同社の縫製工場の様子を見ると、型紙を個別につくっているようなので、その点だけを見ると「フルオーダー」といってもおかしくはないといえます。

ただし、極端な事例にはなりますが、低価格オーダースーツの定番「オーダースーツSADA」も、型紙を一からつくっていることから、フルオーダーを謳っています。型紙からつくってくれるのはメリットの一つといえますが、さすがに1着2万円からつくれるSADAを、本来のフルオーダースーツと同じくくりに入れるのはおかしいと、誰もが感じるところでしょう。

つまり、フルオーダーと一概にいっても、その定義の仕方によって異なってくるので、Re.museが公式に明言をしていない以上、「イージーオーダーか、廉価版のフルオーダーか」という言い方になるのです。

テーラーフクオカでつくったイージーオーダースーツ

仮縫いはない

同社のスーツが、一般的な「フルオーダー」とは違う点として、仮縫いがない点が挙げられます。

HPで公開されている「お客様の声」を見ると、「仮縫いはない」という文言がいくつか見られます。また基本的な納期が「1か月半」とされていることからも、仮縫いがないことは間違いないでしょう。

本来のフルオーダーのスーツとは、精緻な採寸を行った上で型紙をつくり、さらに仮縫いという工程を経たうえで再調整を加え、完成品ができるものです。ですから仮縫いがないということは、そのような本流のフルオーダーとは別物であるという話です。せっかく強みとなりうるフルオーダーという点を大々的にPRしないのは、そのような理由からなのでしょう。

工場は信頼の「ファイブワン」か

同社のスーツが「国内工場で縫製されている」ことは公言されているものの、具体的にどの工場であるかは明言がされていません。しかし、勝友美社長には「ファイブワンの工場勤務」(※出典:MEN’S EX)という経歴があり、またRe.museが製作を委託する工場の工場長は「岩下さん」という方が担っています(※出典:勝友美社長のYouTube動画「【女性社長に密着】30万円以上の世界最高峰のスーツ!この時代になぜハンドメイド?」より)が、ファイブワンファクトリーの工場長は岩下信さんという方が務めているので、これらの情報からして、ファイブワンの工場でつくられていることは間違いがないでしょう。ファイブワンもRe.museも「スーツをつくる工程数は400」とアピールしていることからも、同じ製造工程であることがうかがえます。

ファイブワンといえば国内屈指の製造業者で、そのクオリティは疑う余地がありません。ボタン一つひとつの付け方まで手作業でかなり丁寧につくられているので、そのハンドメイドのスーツのクオリティが非常に高いのはたしかです。ただ、その点は非常にポジティブなところだといえるのですが、何を隠そう、ファイブワンが展開するオーダースーツ事業はイージーオーダーにくくられるんですよね。

ですから、こうした点から考えていくと、Re.museがフルオーダーと謳うには少々厳しい感じもしてくるという話です。

なお上記MEN’S EXの記事では、「パターンオーダー」という表記があります。こうした点からも、イージーオーダーと表現するのが最も近いのかもしれません。

そうなると、「イージーオーダー」にしては価格が高すぎるのでは……という疑問が浮かんでくるのですが、それについては下部「価格の検証」の章で詳述しますね。

ユニバーサルランゲージでつくったハンドメイドスーツ。
パターンオーダーでもハンドメイドならクオリティはとても高いです。

選べる生地

同社の生地選びは、バンチブックのような感じでまとめられた冊子から選んでいく形になります。ですから、グローバルスタイルやゼルビーノなどのように一着まるごとのサイズから選べるものではないので、完成品をイメージするのは少し難しくなります。

ただ生地の種類は豊富で、6000~7000種類程度から選べるとのこと。麻布テーラーでも3000種類と謳っているので、これはメリットといえるでしょう。

また、エグゼクティブ層を対象としているからか、使いやすい落ち着いた生地だけでなく、派手な色や柄の生地を多数取り入れているようです。

価格の検証

では肝心の価格について検証していきましょう。

同社HPによると、ランクに応じてPERFECT、LUXURY、ROYAL、BLACKと4段階に分かれていて(何が基準かはわかりませんが…)、それぞれ税別で160,000円~、200,000円~、300,000円~、「ASK」とされています。ですから最低価格は税込みで17万6000円。「イージーオーダー」として最低価格がこれだとかなり割高感がありますが、「フルオーダー」として見るなら、かなり割安といえるのではないでしょうか。少なくとも、仮縫いを入れていないからこそ実現できる価格でしょう。

ただし、この価格で仕立てられる生地がどの程度のものなのかがわからないとなんとも言えないところです。これについては私の主観も含みますが、おそらく最低価格で仕立てられる生地は国内のノーブランドの生地か、インポートものでも比較的手頃なブランドに限られるでしょう。これがゼニアやロロピアーナ、ドーメルなどのブランドになってくると、かなり価格は上がってくると思われます。

実際、こちらのYouTube動画の概要欄には、購入価格が「50万円」と記載されていますし、多くのPR生地で「20万円以上」と記載されていることからしても、最低価格で購入する人は少ないのでしょう。

なお、このくらいの価格帯のスーツを作るなら必須といえる「本切羽」や「水牛ボタン」などのオプションが標準搭載されているのは嬉しいポイントといえます。またYouTube動画を見る限り、ボタンは変わったものや特殊なものまで幅広く取り入れているようなので、その点もメリットといってよいかと思われます。

メリット・デメリット

というわけで、ここまでご紹介した同店の特徴から鑑みるに、

生地やボタンの種類の豊富さファイブワン製のクオリティの高さは、メリットといえるでしょう。

しかしフルオーダーとは言い切れず、イージーオーダーに近い作りであることを考えると、どうしても割高感は感じ得ないところはあります。このあたりを、同店のコンセプトや雰囲気、スタッフさんの提案力にかかるコストとして見合っていると思える方はオーダーすればいいし、そこまでの価値がないと思えばしなければいいという話でしょう。

庶民の私としては……

ただ庶民の私自身としては、提案のベースとして「スーツで叶えたい夢」を尋ねられたり、PRで出ているスーツはほとんどがノータックであったりすることからしても、その割高感を払拭するほどの価値はないと感じました。

同社がメインターゲットとする経営層の場合は「夢」に溢れていることと思いますが、そういう立場でもない限り、「目標」はあっても人に話すほどの「夢」なんて特にないし、あったとしても「夢ではなくて用途や好みなどから提案してよ」と思う方が多いのではないでしょうか。

そして完成品を見る限り、スーツの伝統的なスタイルであるはずのタックを入れている人が少ない点にも、少し疑問を抱いてしまいます。まじて、タイト目で細目なスタイルはだいぶ前の流行で、昨今はゆったりめなスタイルが主流になっているはず。スタイルよく見せるという目的なら、タックによってももまわりにゆとりをもたせ、テーパードを利かせるなど、いくらでも手段はあるはず。こうした点からも、あまりスーツに知識がない方が対象なんだろうと思ってしまうんですよね。ちなみに、YouTube動画で挙がっている方々の完成品を見ると、シャツも一緒にオーダーしているにもかかわらず、ジャケットの袖からシャツが見えていない方がいらっしゃるのも気になりました……。

というわけで、勝友美氏の「Re.muse」の価格やその価値について検証してみました。あくまでも庶民の私の目線からすると、価格に見合った価値は感じられませんでしたが、同店の価値は、「コスパ」とはまた違う次元にあるような気がしますし、何より私のような人間は最初から対象としていないのかもしれません(笑)。上記を踏まえて良いと感じられた方はオーダーしてみるのもアリだと思いますよ。

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