オーダースーツをはじめて仕立てようとするとき、決して安くない買い物だからこそ、絶対失敗はしたくないと考えるものですよね。そこで本稿では、これまで10着以上のオーダースーツを仕立ててきた中で、失敗談といえる経験を皆さまに共有していきます。
サイズの失敗
まず挙げられるのは、サイズの失敗でしょうか。
といっても大きな失敗があって、「もう着られない!」なんてことがあったわけではなく、些細な反省点という程度の話です。
たとえば、はじめて本格的なインポート生地でつくったこちらのオーダースーツ(詳細はこちらの記事に)。

ぱっと見で不自然な点は特にないと思うのですが、当時の私は、細目な感じで、丈もあまり長すぎないジャケットの方がすっきり見えてかっこいいと考えていました。ちょっとタイト目くらいな方がいいという、流行りだったんですね。
それでスタッフさんに相談し、「短すぎても良くないから、1cmくらい短めにしましょうか」ということになりました。今思えば、1cmくらいの調整だったからこそ今でも違和感なく着られているわけですね。
とはいえ流行りに流されることなく、適正サイズでつくっておくべきだったなとちょっとだけ反省をしています。こだわりを反映させられるのがオーダースーツの醍醐味ではありますが、よほどのこだわりがない限り、重要な部分のよけいな調整はせず、適正サイズでお願いするのが無難だなと思いました。
生地選びの失敗
既製品とは違い、注文時には完成品が見られないのがオーダースーツの難しいところ。これで私が大きな失敗をしたわけではないのですが、やはり注文時に思っていたものと完成品の生地の感じが少し違うということは何度かありました。
たとえば、ユニバーサルランゲージやカシヤマなど、サイズの小さめな生地の切れ端でしか確認ができない場合。

それなりのサイズはあっても、やはり完成品に比べたらかなり小さいサイズから判断しなければならないので、特にはじめての方にはイメージするのがやや難しめだったりします。小さい切れ端の場合は暗く見えても、完成したら思ったよりも明るかったということはけっこうあるんですよね。
一方、一着まるごとのサイズの生地から注文できる場合。SADAやグローバルスタイル、ゼルビーノなどがこのスタイルですね。

こちらの方がサイズが大きい分、完成品をイメージしやすくなります。こんな感じで体にあててみることも。

しかしこの「1着丸々スタイル」でも、完成品の色がイメージしていたものとだいぶ違ったことが一度ありました。
ゼルビーノというお店でスーツを仕立てたとき、店舗の中では丁寧に吟味し、「正統派なブラウンの色味が素敵だな」と思って注文したのですが、完成品は思ったよりも暗い感じだったんですね。

まあこれはこれで全然良かったんですけどね(笑)。
この件での学びは、生地はなるべく自然光で確認をすべきだということ。このときの店内はやや暗めだったのですが、窓際の自然光が入るところで確認をしておけば、また印象は違ったのかもしれません。自然光に照らすと、けっこう印象が変わるものですよ。
セールにつられた失敗
最後にお伝えしておきたいのは、セールにつられて買ってしまった!という失敗談です(笑)。
「2着5万円」と、よくセールであるかのように広告が出たりしていますが、これは一時的なものではなく、最低価格帯の横並びの定番価格になっています。
はじめてオーダースーツにチャレンジしてみたときはまだよかったのですが、その直後にもまた「2着5万円はやっぱり安いなぁ」などと、連続でオーダーしてしまったのは、やや失敗だったかなという思いはぬぐい切れません。
また「2着5万円」の“偽セール”ではなく、本当のセールの場合。
セール価格につられて生地を見せてもらったら、「まあ通常価格なら買わないけど、セール価格ならほしいかな」という生地があり、オーダーしてしまったことは何度かありました。
これ、それほど後悔をしているわけではないのですが、本来オーダースーツとは、「この生地で作りたい!」という感情ありきで作るもののはず。単に「安いから」という理由でオーダーすると、それほど気持ちが高ぶらないオーダー経験をすることになりかねないので、やはりセール時でもピンとくる生地でこそスーツは仕立てるべきだと思うのです。
以上、私のオーダースーツの失敗談でした。皆様の良きオーダースーツライフにお役立ていただけましたら幸いです。