メンズスーツは細身な方がかっこいいとか、ゆったりめに着るのがトレンドとか、「じゃあどのくらいのサイズ感で着るべきなんだよ」と惑わしてくる言葉が世には溢れていますよね。
そこで本稿では、そんなトレンドも踏まえつつ、時代を問わない普遍的なメンズスーツ本来のかっこいい着こなし方などについて、低価格オーダースーツを10着以上作ってきた経験も踏まえながら、検証していきます。
スーツのトレンドと普遍性について
まずは現在のスーツのトレンドについて確認しておきましょう。
少し前まではとにかく細身なスーツが流行っていましたが、今はやはり、クラシック回帰のトレンドの方が優勢といえます。ただクラシック=昔っぽい着方と単純変換するものではなく、ジャストサイズよりも少しゆったりめに着こなすくらいが、私も含めた大多数の一般層(ガチ勢の上級者以外、という意味です)にはちょうど良い着方といえるのではないでしょうか。
そのくらいの着方こそ、トレンドをしっかり押さえつつも、トレンドに左右されないスーツ本来のかっこよさもあわせ持っているので、特段のこだわりがない場合は、このくらいの“ほどよいゆったり感”を目指すのがちょうどよいのではないでしょうか。

ほどよいゆったり感を出すには
ではそのような“ちょうどいいサイズ感”でスーツを着るにはどうすればいいか。
まず既製品の場合、これはなかなか難しい現実があります。
というのも、既製品のスーツは基本的に「ジャケットの肩幅」でサイズを決め、そこから丈感などを調整する形がとられています。ですから必然的に肩幅を基準としたサイズの決め方になってしまいますし、そこから調整できる幅はほとんどないわけですね。
スラックスも既製品はノータック(太ももまわりに入る折り目(プリーツ)がない仕様)が基本なので、細身な雰囲気が先行するところがある(参考:スーツのパンツ、タックはダサいの?むしろ入れるのが本当の流行りよ【オーダースーツ】)。
ですからそのようなサイズ感を求めるなら、やはりオーダースーツという選択肢は必然になってくるといえるでしょう。既製品が悪いというわけではなく(多くの人の体にうまく合わせる優れた既製品もあります)、決まったサイズ感でしか着られない、細部の調整ができないというのは既製品の仕様上しかたがないことなのです。

こちらの写真は、リネンとウールの生地をつかって、春夏にリラックスした雰囲気で着られるようなイメージで、“けっこうゆったりめ”なサイズ感で仕立てたオーダースーツです。どちらかというと、セットアップのような感じですね。
ジャケットはあまり絞りを入れず、丈もやや長め。肩パットをぬいて肩回りにも柔らかい雰囲気を出しています。パンツもワンタックを入れつつ、けっこう太めに、かつストレート気味(あまりテーパードをかけない)にしているので、良い感じにゆるさが出ているのではないでしょうか。まあ、上記に紹介した“ややゆったりめ”の範疇は超えているのですが…(笑)。
ここまで細かい調整ができたのは、オーダースーツの中でも「イージーオーダー」にくくられるお店で仕立てたからであり、格安店に多い「パターンオーダー」の場合はもう少しサイズ調整に制限があることはあります。
とはいえ、いずれにしても既製品よりもはるかに調整がきくことは間違いありません。これまで既製品しか買ったことのないという方は、パターンオーダーでもイージーオーダーでもどちらでもいいので、まずは一度オーダースーツで“ややゆったりめシルエット”にトライしてみてはいかがでしょうか。今は2万円台から高品質なオーダースーツが手に入る時代なのですから。
そんな「高コスパ店」について検証した以下の記事も参考にしてみてください。