【実物写真あり】青山のオーダースーツ「SHITATE」は本当にお得か 評判や値段の実態を検証してみた

安いスーツの量販店でお馴染み「洋服の青山」ですが、最近はオーダースーツにも力を入れていることをご存じでしょうか。

「Quality Order SHITATE(クオリティーオーダー・シタテ)」という名称の低価格オーダースーツラインを展開するようになり、実は2023年より、全国どの青山の店舗でも対応できるようになっています。

しかしこのオーダースーツ、本当にお得なものなのか。その値段や品質、コスパなどについて、これまで10着以上の低価格オーダースーツをつくってきた私の目線から検証していきます。

目次

青山のオーダースーツ「SHITATE」の特徴

まず、「SHITATE」の特徴からおさえておきましょう。

パターンオーダーを採用

前提としてオーダースーツには、主にフルオーダー、イージーオーダー、パターンオーダーの3種類があります。ここでは細かい説明は省きますが、極々簡単にいうと、フルオーダーはスーツの型紙から一人ひとりにあわせてつくる一方で、パターンオーダーは、もともと用意されている型紙から要所要所を調整していく形になります。ある程度決まったサイズ感のジャケットを羽織り、そこから丈感や肩の補正などを入れていくイメージですね。

つまり、言ってしまうと「パターンオーダー」が一番簡単なオーダースーツということになってくるわけですが、SHITATEはこちらを採用しています。とはいえ、パターンオーダーだからといってクオリティが低いという話ではまったくなく、これまで既製品を着ていた方からしたらはるかに体に合ったスーツができるのは確かです。基準となるゲージ服を着てみて、「しっくりこない」ということがなければ、きちんとしたスーツが出来上がるはずです。

逆に言うと、パターンオーダーだからこそ、手に取りやすい価格が実現できているともとれるわけですから、その意味でコスパは非常に良いといえるのではないでしょうか。なお具体的な価格については下部で詳述いたします。

同じ青山系列の「ユニバーサルランゲージ」で仕立てた低価格オーダースーツ。
基本的な製造工程はSHITATEと一緒です。SHITATEとユニバーサルランゲージの違いについては後述します。

パターンオーダーを採用している他のお店

なお、低価格帯のオーダースーツ店なら、そのほとんどがSHITATEと同じくパターンオーダーを採用しています。DIFFERENCE(ディファレンス)やグローバルスタイルなど、有名どころはだいたいそうですね。後述しますが、価格もほとんど横並びの実態があります。

半毛芯を標準搭載

これはあまり公言されることがない要素なのですが、スーツには、表地と裏地をつなぐ「芯地」というものがあります。詳しい説明は省きますが、接着剤でくっつけているものが「接着芯」、馬の毛などが使われた天然ものが「毛芯(けじん)」と言われていて、一般的には「毛芯」の方が丈夫でスーツの立体感が保たれやすく、品質が良いとされています。

何も「接着芯が悪い」という単純な話ではないのですが、たとえば「SADA」や「ダンカン」などは接着芯が標準搭載となっている一方で、SHITATEは、DIFFERENCEやグローバルスタイルなどと同じく「半毛芯」(フルではなく半分という意味です)を標準搭載。低価格帯にもかかわらず、ラペル周りなど大事な部分には毛芯が使われているというのは、メリットといえるのではないでしょうか。

つまり、青山の「SHITATE」のオーダースーツの特徴をまとめると、

・パターンオーダーという分類のオーダースーツを展開していて、その分価格がおさえられている

・半毛芯が標準搭載されている=見えないところにもこだわりがあり、「さすが大手」といった品質ではある

・ただし、DIFFERENCEやグローバルスタイルなど、競合店と似たような特徴ではある

といったところでしょうか。ただ「SHITATE」が業界で画期的だったのは、全国の「洋服の青山」全店舗で本格的なオーダースーツが仕立てられるようになったところだと私は思います。首都圏、特に東京にいればいくらでもオーダースーツ店の選択肢がある一方で、地方在住の方の場合、周囲に本格的なオーダースーツが仕立てられるお店がなかなかないという方も多いことでしょう。それが、青山が「SHITATE」を全店舗で展開し始めたおかげで、大手の安心クオリティで、かつ業界最安水準でオーダースーツが手に入るようになったというのは、実はけっこうすごいことではないかと思うのです。

その品質やコスパだけを比較すると、同価格帯の競合店と大きくは変わらなく見えてしまいますが、一人のオーダースーツファンとしては、より幅広い方がオーダースーツにチャレンジしやすくなったことを、とても喜ばしく感じています。

青山のオーダースーツ「SHITATE」の値段について

青山HPより

では、肝心の「値段」について検証していきましょう。

まず、1着の最低価格は3万1,900円。これが2着セット購入になると11,000円引きとなり、5万2,800円。つまりセット購入の場合は、1着あたり2万6,400円でオーダースーツが仕立てられることになります。これまで既製品しか買ったことがないという方も、これなら十分手が届くというか、むしろ既製品より安い場合もあるくらいではないでしょうか。

なお青山系列の上位ラインには、「ユニバーサルランゲージ」というブランドもあるのですが、こちらも2着セットなら同じく5万2,800円になります。1着単品購入なら3万9,000円と少し割高になりますが、2着購入時は同じ価格になるんですね。ちなみにSHITATEもユニバーサルランゲージも、基本的な製造工程は同じです。その意味で、本稿に掲載しているユニバーサルランゲージでつくってみた写真は、ぜひ参考にしてみてください。

もう少し付け加えると、上記で紹介したDIFFERENCEやグローバルスタイル等の競合店も、実は全く同じ価格設定となっています(笑)。ですから私の中では、この「2着5万円程度」というのが、最低限の品質も備えた上での最低価格なのではないかと思っています。探せばもう少し安いオーダースーツ店もありますが、せっかくオーダーするなら品質もそれなりのものにはしたいと思うなら、やはり大手どころに頼っておくのが無難なのでしょう。

選べる生地

ユニバーサルランゲージと同じ、このようなサイズ感の生地から選んでいくのが基本となります。グローバルスタイルの場合はまるごと1着分のサイズ感で見られるので、そこは若干のディスアドバンテージでしょうか。

ただし、生地のラインナップはユニバーサルランゲージと少々異なります。店舗や時期によっても違うのですが、ユニバーサルランゲージの方がより高価格帯のインポートものの生地も豊富にそろえているイメージでしょうか。これは、ユニバーサルランゲージは、手作業工程の多い「ハンドメイド」のラインをプッシュしていることもあり、それにあわせて少し値の張る生地も多めにそろえているということでしょう。SHITATEの方にもゼニアやロロピアーナなどの高級生地もありますが、上位ラインのユニバーサルランゲージではなく青山でオーダーしようという層向けですから、低価格帯から高価格帯までより幅広くそろえている印象です。

なお、どちらも最低価格帯の生地は、ポリエステルを50%程度含みます。これもまた、業界横並びの相場ですね。ウール100%の生地は、5万円前後から選べるイメージです。

SHITATEと製造工程が同じユニバーサルランゲージでつくった人生初のオーダースーツも、
ポリエステル50%を含む「2着5万円」の生地でした。

接客について

ここまでSHITATEとユニバーサルランゲージの比較が出てきたので、接客についても触れておきます。これについては私の主観も含んでしまいますが、青山もユニバーサルランゲージも、そしてその中間ブランドであるスーツスクエア(旧スーツカンパニー。こちらでもSHITATEに対応しています)も含めてたくさんの店舗を訪れてきた身としては、

オーダースーツの知識はユニバーサルランゲージの方が高めな傾向にあるけど、愛想の良い方は青山の方が多い。

ということになるでしょうか。

もちろん、ユニバーサルランゲージにも愛想の良い方はたくさんいらっしゃるのですが、都心の主要店を中心に、本当に接客業なのかなと思うケースは少なからずありました(笑)。

逆に青山でもオーダースーツの知識が豊富な方もたくさんいらっしゃいます。ただ、もともとが量販店メインの売り場なので、その意味でオーダースーツがメインとなるユニバーサルランゲージのスタッフさんとは、知識をつける方向性が少し異なっているような気もしています。

オーダースーツを購入する際は、スタッフさんを信頼できるかも重要な要素ですから、まずはお店を訪れてみて、説明を聞いてみることをオススメします。

SHITATEを他店と比較してみた

ではここからは、Quality Order SHITATEを、他社の有名どころと比較してみましょう。DIFFERENCEやグローバルスタイル等、ほぼ横並びの競合店についてはこちらの記事(「SADA、Global Style、ユニバーサルランゲージ…格安オーダースーツ店を比較・検証してみた 最もコスパの良いお店はどこ??」)を参考にしていただきつつ、以下は少し違いのある有名店2つとの比較です。

オーダースーツSADAと比較して

オーダースーツについて調べ始めると、よく目にするようになる大手どころがSADAでしょう。

SADAが勝っている点

その特徴は何より、フルオーダーでありながら驚異的な低価格を実現している点です。フルオーダーといえば、先述の通り型紙を一からつくるので、最もランクの高い作り方になります。いわゆる「仮縫い」のついた本格的なフルオーダーなら、数十万円くらいはかかるのが当たり前の世界なのですが、SADAでは1着あたり21,780円(税込)という、もはやよくわからない価格を実現しています。

とはいえ、お察しの通り「仮縫い」なども含んだ完全なフルオーダーではなく、あくまでも型紙を個人にあわせてつくるという意味でのフルオーダーなので、その点はご注意ください。しかしパターンオーダーやイージーオーダーは「お店が用意した型紙にあわせて作る」のがふつうなので、それに比べたら優位性があることは間違いないでしょう。

これだけ安価である理由の一つは、SADAが自社工場を持ち、工場直販のビジネスモデルを採用しているからです。これにより中間コストを削減し、効率的な生産が可能となっています。個人でオーダースーツ業を展開している方の中でも、製造はSADAに発注しているケースはけっこうあります。工場を抱えているという意味で、オーダースーツ業界では知らない人はいない会社なんですね。

SHITATEが勝っている点

一方、先に述べた「毛芯」については、SADAは接着芯を基本としています。一概にこれが悪いという話ではなく、見た目にはほぼ影響はないのですが、この点に関しては、「半毛芯」を採用しているSHITATEに軍配が上がるでしょうか。

総合的に見ると、他店より優れているポイントの多いSADAですが、私自身はここでオーダーしようという結論に至らなかったので、よかったらこちらの記事も参考にしてみてください。

オーダースーツKASHIYAMA(カシヤマ)と比較して

アパレル大手「オンワード樫山」が関東を中心に展開するオーダースーツ店で、こちらも大手の一角として、知名度を広げつつああります。

カシヤマが勝っている点

カシヤマの特徴を端的に述べると、

イージーオーダーを採用しながら「2着5万円」の低価格を実現し、さらに納期が2週間前後という驚異の早さ

ということになります。

見られる生地サイズはSHITATEと同じくらい。

✓イージーオーダーについて

「イージーオーダー」といえば、SHITATEやユニバーサルランゲージ、グローバルスタイルなど、低価格帯のオーダースーツ店でよく導入されている「パターンオーダー」よりもワンランク上とされています。

正確に言うと、パターンオーダーと同じように、サイズ調整の基準となる「ゲージ服」を着て、そこに調整を加えていく形式ではあるのですが、カシヤマの場合は「パターンオーダー」よりもかなり細かいところまで調整が効くようになっているので、「イージーオーダー」にくくられるということです。

厳密に同じものだとは言えないものの、オーダースーツの名門、ゼルビーノやファイブワンなどもイージーオーダーを採用していますから、これはSHITATEに比べて大きな優位性といえるのではないでしょうか。

✓「2着5万円」のお決まり価格

カシヤマはイージーオーダーを採用していながら、価格についてはSHITATEと同じ「2着5万円」となっています。

✓納期の早さはダントツ

通常では1か月から1か月半くらいが相場であるところ、なんとカシヤマは最短で1週間という、もはや意味の分からない納期を売りにしています。実際に店員さんに確認してみると、どうやらこれは時期によるとのこと。1年を通して、2週間程度で仕上がる時期が最も多いようで、これが繁忙期になると3週間程度、閑散期になると1週間で仕上がるようです。つまりはだいたい2週間前後だと思っておけばいいということですね。

ちなみにこれ、追加料金がかかりません。例えばDIFFERENCEでは「納期短縮サービス」を用意していますが、5500円の追加料金がかかりながらも、もともと1か月近くかかる納期が1週間短縮されるだけなので、この点も大きな優位性といえるでしょう。

✓半毛芯を採用

SHITATE等と同じく、最低価格帯のスーツでも、「半毛芯」が標準仕様となっているのも嬉しいポイントです。

SHITATEが勝っている点

スペックで比較すると、基本的にはカシヤマが勝っているということになります。ただ、オーダースーツは対応してくれるスタッフさんとの相性がけっこう重要だったりします。その時々で、出会える生地も変わってきます。ですからどちらも店舗を訪れてみて雰囲気を確かめるのが一番良いのではないかと思います。

その上でSHITATEが勝っている点としては、圧倒的な店舗の多さでしょう。首都圏にしか店舗がないカシヤマに比べ、青山の店舗は文字通り全国津々浦々にあります。どこでもオーダースーツを仕立てられるという点では、SHITATEの方が圧倒的に勝っているといえます。

というわけで、洋服の青山が展開するオーダースーツ「Quality Order SHITATE(クオリティーオーダー・シタテ)」について、他店と比較しながら、値段やコスパについて検証してみました。同価格帯のオーダースーツ店についてはこちらも参考にしてみてください。

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